2014年12月21日日曜日

2015年3月ダイヤ改正(北越急行の心意気編)

前回このブログで2015年3月のダイヤ改正で変わる上越・北陸新幹線について書きました。
それに引き続き今回は「在来線編」を書く予定でした。というか、もう書き上げたんです。が、予定変更です。「在来線編」の次に書く予定だった「北越急行編」を先行して公開したいと思います。それは何故か?「北越急行の心意気を見たから」という理由です。

・ 存亡の危機に立たされる北越急行 ・

1997年3月22日、北越急行ほくほく線(六日町~犀潟)が開業。戦前からの半世紀に渡る鉄道誘致活動がようやく実を結んだ瞬間でした。開業と同時に東京と北陸各県をつなぐバイパス路線として特急「はくたか」が誕生。直線区間の利を活かし、特急での国内最高速度となる160km/hでの運転を実施しました。

1997年の設立から間もなく18年、大きな変化が訪れます。2015年3月、北陸新幹線が金沢延伸開業。北越急行の売上の九割を占める特急「はくたか」は廃止となり、「はくたか」は北陸新幹線の愛称として受け継がれることに、もしかすると北越急行からみると「召し上げられる」ことになりました。会社の売上の九割を占める看板特急の廃止で北越急行は最大の岐路に立たされます。


・ 座して死を待たず ・

北越急行の開業から半年後の1997年10月1日、北陸新幹線の一部となる長野新幹線(高崎~長野)が開業しました。翌年の1998年には長野から先の区間の工事が着工され、そう遠くない将来に北陸新幹線が開業し、ほくほく線はバイパス路線としての役目を終えることが想定されました。特急「はくたか」が走っている間は第三セクター鉄道でトップの営業成績であろうと、北陸新幹線が開業してしまえば中山間地を走る北越急行は一気に赤字路線の地方ローカル線に転落してしまうことが明らかだったのです。

当然北越急行もそんなことは百も承知でした。北陸新幹線開業までに内部留保を100億円以上にすることを目指し、懸命な営業努力を続けました。その努力の結果、2012年度の決算で内部留保100億円以上という目標を達成したのです。

・ 起死回生の策 ・

北陸新幹線開業までに目標の100億円の内部留保を達成。これで開業後もこの内部留保を少しずつ切り崩して路線を守ればいい、なんてことを考えるのは並の会社です。北越急行は並の会社ではありませんでした。特急「はくたか」を失った北越急行は起死回生の策に打って出ます。2014年11月に「超快速」の運転を開始することを発表しました。高規格路線であることを活かしこれまでにない快速列車を走らせることによって地方のローカル鉄道が北陸新幹線に対抗しようとしたのです。


・ 超快速スノーラビット ・

2014年12月19日、鉄道会社各社から2015年3月のダイヤ改正の内容を知らせるプレスリリースが出されました。この中で新たに誕生する超快速の愛称は「スノーラビット」となることと時刻表が発表されました。北越急行のプレスリリースによると超快速「スノーラビット」に乗った場合、東京から直江津までの移動は次のようになります。

東京 7時48分
↓ 上越新幹線「Maxとき」305号
越後湯沢 9時08分
越後湯沢 9時17分
↓ 北越急行 超快速「スノーラビット」
直江津 10時14分

東京から直江津までの所要時間は2時間26分

これに対し、北陸新幹線に乗った場合は次のようになります。

東京 7時52分
↓ 北陸新幹線「はくたか」553号
上越妙高 9時44分
上越妙高 10時07分
↓ えちごトキめき鉄道 普通列車
直江津駅 10時22分

東京から直江津までの所要時間は2時間30分

超快速に乗ったほうが所要時間が4分ほど短くなるのです。それに加えて料金も新幹線を使った場合では9,000円(JR乗車券+自由席特急+トキめき鉄道乗車券)であるのに対し、ほくほく線経由では8,050円(北越急行が超快速料金を設定しなかった場合)となり950円ほど安くなるのです。北陸新幹線に乗るよりも、地方のローカル鉄道である北越急行に乗ったほうが早く安く行けるのです。北越急行、乾坤一擲の勝負といえるでしょう。


・ 白い鷹と雪うさぎ ・

超快速「スノーラビット」は速度の面でも攻めの姿勢が見られます。越後湯沢~直江津間84.2kmを最高速度は110km/hながらも最短57分で駆け抜けます。表定速度は全区間で見ると88.6km/h、ほくほく線区間だけで見ると99km/hにも達します。新潟と金沢を結ぶ特急「北越」の表定速度が86.7km/h、関東大手私鉄の小田急ロマンスカーや東武スペーシアの表定速度が70km/h前後、関東私鉄最速の京成スカイライナーでも101km/hちょっとであることを考えるとどれだけの速度がわかってもらえると思います。これまでもほくほく線の快速は他社の特急並みの速さと言われていましが、超快速は特急以上の速さとなります。

はくたかに追い回された雪うさぎは恐ろしい速さを身につけてしまったようです。

・ 北越急行の心意気 ・

と、ここまでは規定通りの内容です。これだけだったらブログ記事の公開の順番を変えることはなかったでしょう。私は北越急行のプレスリリースを見てあることに気がついたのです。

北越急行の新たな看板列車となる超快速「スノーラビット」。この列車は越後湯沢と直江津で1往復となっています。その走る時間から北越急行の心意気というか本気がかいま見えるのです。
下りの超快速「スノーラビット」は9時17分に越後湯沢を出発して十日町に9時42分に到着し、10時14分に直江津に到着。上りは17時55分に直江津を出発して十日町に18時27分に到着、終着の越後湯沢には18時53分の到着となっています。

この超快速「スノーラビット」は、「直江津や十日町から東京へ向かう人達のための列車」ではなく、
「東京から直江津や十日町へ来る人達を迎えるための列車」
なのです。この考え方は東京に本社を持つ会社では絶対にできない発想です。六日町に本社をおき、常に地域の足として在り続けなければならない北越急行ならではの発想なのです。確かに地方から東京へ向かう人たちのほうが需要は大きいでしょう。しかし、その需要に応えていったらどうなるか。北越急行が走る六日町、十日町、直江津の街から人が出て行くばかりになってしまいます。そのような地域に北越急行は必要とされるのか。その問いへの北越急行の答えがこの超快速「スノーラビット」なのだろうと私は思うのです。

北越急行の正念場はここからなのです。この先、これまでと同様に北越急行が地域の足として在り続けられるか。地域はその北越急行の走りに応え続けることができるのか。ほくほく線沿線の官民一体となった取組が問われる時代を迎えそうです。超快速「スノーラビット」が地方創生の鏑矢となるよう祈るばかりです。


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